
原子力発電所は今後どうなる?
日本には全国各地に原子力発電所がありますが、その多くは現在稼働していません。
以前、原子力発電はクリーンなエネルギーとして日本では推進されていました。
ところが、2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故により、日本はエネルギー政策の大きな転換を迫られることになったのです。
そもそも原子力発電とは?
そもそも原子力発電とは、核分裂時に発生する熱エネルギーで高圧の水蒸気を作り、蒸気タービンと発電機を回転させる発電方法のことをいいます。
燃料にはウランやプルトニウムといった核燃料を使用します。
株式会社アトックス曰く、原子力発電のメリットは、少量のウランやプルトニウムの燃料から膨大なエネルギーを生み出せるところにあります。
火力発電や水力発電に比べて非常に効率が良いので、電力を安定的に供給することができます。
少ない燃料で多大なエネルギーを生み出せるので、コストが割安に住むというメリットもあります。
火力発電の場合には、天然ガスや石炭、石油といった化石燃料を燃やすことで熱エネルギーを生み出します。
そのため二酸化炭素が排出されるので、環境に悪影響を及ぼすとされます。
二酸化炭素は、温室効果ガスと呼ばれており、地球温暖化の原因の1つと考えられています。
原子力発電は、二酸化炭素などの有害な物質を発生させることはありません。
そのためクリーンなエネルギーと考えられていたのです。
2011年に東日本大震災が発生
しかし、2011年に東日本大震災が発生し、東北地方では大きな被害が発生しました。
東日本大震災では大規模な地震が起き、多くの建物が倒壊しました。
特に被害が大きかったのは、岩手県・宮城県・福島県といった東北地方です。
そして、地震による大津波が発生し、東北地方の沿岸部は壊滅的な被害を受けたのです。
福島県の大熊町・双葉町にあった福島第一原子力発電所もその1つでした。
地震によって原子炉は自動停止し、停電が発生したため外部電源が全て失われてしまいました。
通常は非常用のディーゼル発電機が稼働しますが、津波によって海水につかり機能を失ってしまいます。
それに加えて、電源設備や非常用バッテリー、燃料タンクなども全て失われてしまったのです。
それによりポンプを動かすことができなくなり、原子炉への注水ができなくなりました。
核燃料は運転を停止した後も膨大な熱が発生するので、注水しないと核燃料が溶け出してしまいます。
結果として炉心溶融(メルトダウン)が起こり、放射性物質が大量に放出されるという事故が引き起こされます。
チェルノブイリで起きた原子力事故に次ぐ放射性物質の量に
これは1986年にチェルノブイリで起きた原子力事故に次ぐ放射性物質の量になりました。
大量の放射性物質が放出されたことにより土壌や海洋が汚染され、多くの人が避難を余儀なくされました。
現在も立ち入りが禁止になっている区域もあります。
溶け落ちた核燃料を取り出す作業なども残っており、事故から何年も経った今でも終息していません。
放射性物質を含む汚染水をどう処理するのかといった問題もあります。
このように原子力発電所は、一度大きな事故に見舞われると甚大な被害が発生します。
事故の後は原子力発電を疑問視する声が上がり、太陽光発電など再生可能エネルギーを望む声が大きくなっています。
世界でも福島の事故の影響を重く受け止め脱原発の流れに舵を切った国もあります。
しかし、その反対に原子力を推進している国もあり、推進派と反対派が存在します。
日本でも脱原発を求める声が高まりましたが、経済的なコストの面から原子力を望む声もあります。
一度重大事故が起こると経済的にも大きな損失が発生する
原子力発電は火力発電よりもコストが安いですが、一度重大事故が起こると経済的にも大きな損失が発生します。
太陽光発電や風力発電、地熱発電、バイオマス発電などはクリーンなエネルギーとして知られます。
二酸化炭素など有害物質も発生しません。
ただし、自然の影響を大きく受けるので安定的な供給を実現するのは難しく、発電量もあまり大きくはありません。
そのためコストが割高になることが懸念されています。
また、太陽光パネルの廃棄の問題なども発生しており、なかなか全てのエネルギーを再生可能エネルギーに変えるというところには至っていません。
日本では福島の事故の後、火力発電の割合が大きく増加しています。
それから日本では、原子力発電所で起こり得る事故に備えた新しい安全基準が設けられました。
新しい安全基準では、地震の揺れを最大に想定し、地震に対する安全性をまず確保します。
次に津波による電源喪失という事態を防ぐため、敷地や屋内が浸水しないような安全対策をとる必要もあります。
そして原子炉の炉心が損傷するような重大事故に至った場合の対策なども取られています。
まとめ
新しい基準を満たす原子力発電所は、原子力規制委員会の審査に合格すれば再稼働することになっています。
ただし、地元の住民の根強い反対などもあり、再稼働はあまり進んではいません。
しかし、火力発電所が老朽化していたり、化石燃料のコストがかさむといった問題も起きています。
何を優先するのか難しい判断が求められます。
最終更新日 2025年7月9日 by arhif