一級建築士の資格について
建築士には大きく分けて三つの資格が存在します。
一級建築士と二級建築士、そして木造建築士です。
一級建築士が他の建築士資格と大きく異なる点は、全ての建築物の設計及び監理業務をすることが出来るという点です。
二級建築士なら、設計、監理が出来る規模が限られてきます。
木造建築士なら、木造を専門として設計、監理業務を行うことになります。
建築物の規模や構造を問わず、全ての建築物の設計、監理を行うなら、一級建築士の資格は必須と言えます。
資格を取得するには、まず、資格試験を受験し合格する必要があります。
資格試験の受験資格は、最終学歴によって異なりますが、数年間の実務経験が必要となります。
実務経験無しでの受験は、現在では不可能となっています。
その点が、他の国家資格と異なる点と言えるでしょう。
数年の実務を経験し、受験資格を取得しましたら、資格試験を受験することになります。
試験は二段階に分かれて行われます。
まず、学科試験が行われます。
記述方法はマークシート方式です。
小論文といった記述試験はありません。
四択問題となります。
学科試験の科目は、計画、環境、法規、構造、施工の五科目です。
この五科目を1日で受験します。
そして、学科試験に合格することが出来ましたら、次は製図試験を受験することになります。
学科試験では、受験者数の半数以上の人が脱落することになります。
製図試験は、事前に設計課題が公表されます。
その設計課題が発表されてから製図試験までの間に、製図のトレーニングを行います。
製図試験は手描きです。
現在のところ、コンピュータを使ったCADでの製図試験は行われていません。
ですから、仕事ではコンピュータのCADを使う機会が多く、手描きをする機会が少なくなってきている建築業界に従事している人にとっては、手描きでの制限時間内の製図はかなり難易度の高いものなのです。
ですから、事前にトレーニングをする必要があるのです。
製図試験までトレーニングを積み、それからいざ製図試験に臨みます。
製図試験では法令集といった資料の持ち込みは出来ません。
ですから、建築基準法などの法律を十分に把握して製図試験を受験する必要があります。
製図試験が終了しましたら、それから2ヶ月半ほど後に合格発表があります。
合格できるのは、全体の受験者数の1割程度という狭き門です。
ですから、司法試験に並ぶ最難関の国家試験のひとつとされています。
試験に合格しましたら、そのままの状態ではまだ建築士ではありません。
合格証を提出し、免許証を受理して初めて建築士として名乗ることが出来るのです。
そして建築関係の全ての業務に携わることが出来るようになります。
また、建築士資格を取得し、実務経験を積むと、管理建築士として活動することが出来ます。
管理建築士とは、建築業務を行う団体を管理する建築士のことで、責任は重いですがやりがいのあるポジションと言えます。
一級の建築士の資格を取得してからは、あらゆる建築業務に関わることが許可されます。
設計事務所の場合ですと、建築物の設計から工事監理、建設会社の場合ですと、監理技術者として工事現場の重責を担うことになります。
設計事務所の場合ですと、確認申請の際に提出する図面や書類に自ら押印することが出来ますし、建設会社の場合ですと、工事全体の責任者として、工事を監督することになります。
このような重要なポジションを担うことが出来る一級建築士は、企業にとって重要な人材ですし、独立して自身で建築士事務所を開業することが出来ます。
企業に属するにせよ、独立して建築士事務所を開業するにせよ、非常に有効な国家資格なのです。
それ故に、一級の建築士資格を所有している人は、企業からヘッドハンティングされやすいです。
それも、かなりの好条件でヘッドハントされますので、建築業界に従事している人たちにとっては必ず取得しておきたい資格なのです。
従来の一級建築士は、1本化されていましたが、現在では通常の一級の他に、構造設計と設備設計の建築士資格が存在します。
つまり、さらに上級の建築士資格が出来たということになります。
構造設計及び設備設計の建築士資格は、一級の建築士資格を取得してから実務経験を積んで、講習を受講して試験に合格して取得することが出来ます。
現在の確認申請制度では、建築物の規模によっては、構造設計の建築士と設備設計の建築士の資格を保有している人が設計に関与することが求められますので、より高いスキルを身につけたい場合は資格を取得する必要があります。
このように、一級建築士は非常に難易度の高い国家資格です。
しかし、それだけの価値がこの資格にはあります。
自分のスキルをアップさせるだけでなく、社会的地位を上げることも出来るのです。
全ての建築物の設計や監理に携われるという充実感を味わうことが出来ますし、達成感を味わうことが出来る資格なのです。
最終更新日 2025年7月9日 by arhif